「応用になると解けない…」数学ができない原因は、基礎じゃなく“考え方”にある?
基礎はできているのに応用になると解けないのはなぜ?
- 「基礎ができているのに応用になると解けない」
- 「定期試験はできるのに、模試になるとできない」
このようなご相談をよく受けます。できないとはいっても、解答解説を見れば(聴けば)わかるということが多いので、まるで「試験になると解けない病」であるかのようにとらえている方もいらっしゃいます。

しかし、この現象には解決策がございます。それは、次の3点を全て実行することです。
- 解き方の作業手順を覚えるだけでなく
- なぜその手順でその内容に触れる必要があるのかを理解し
- その説明ができるようにする
「試験になると解けない病」にかかっている方は、ほぼ例外なく、第一段階まで(解き方の作業手順を覚える)しかしていません。
言い換えると、問題と解答手順をセットにして丸暗記しているだけなので、その問題しか解けないという状態に過ぎないということです。
もちろん、解き方を学ぶ第一歩は、問題を解く作業手順を理解して覚えることなのですが、そのままですと第一歩を踏み出しただけということです。次の歩みに進める(考えて解けるようになる)ためには、それなりの準備が必要です。
考え方とは何か?単なる暗記とどう違うのか?
「ちょっと考えればわかるだろ!」
とよく言われますが、そもそも「考える」って何をすることなのでしょうか。
考えることで問題を解くという場面に限定するならば、
考えるとは、言い換えることである
と私は位置づけています。その言い換えが役に立つ言い回しになれば、
「じゃあ、こういうことになるな!」
と自然に話を進めていくことができ、結果として問題が解けていく、ということになるのです。
例えば、次の問題にどう対処するか。
例題
解が2,3である2次方程式のうち、2次の項の係数が1のものを求めなさい。
解答
解が2,3である2次方程式は次のように表せる。
$$ a(x-2)(x-3)=0 $$
\( x^2 \) の係数が1であるから、\( a=1 \) となり
$$
\begin{align}
(x-2)(x-3) &= 0 \\
x^2-5x+6 &= 0 \quad \cdots(\text{答})
\end{align}
$$
【応用力がつかない例】
$$
\begin{align}
(x-2)(x-3) &= 0 \\
x^2-5x+6 &= 0 \quad \cdots(\text{答})
\end{align}
$$
これしか書こうとしない。しかも、「解が2,3」「2次方程式をつくれ」と最小限のキーワードだけ抜き出し、それとこの2つの式とをセットにして丸暗記する。
【応用力がつく例】
(準備)
2次方程式を因数分解型で表すと、解が\( a,b\)のとき、
$$ a(x-a)(x-b)=0 $$
であることを、\( a \)が必要な理由も含めて説明できる。もちろん、「2次方程式」「解」「因数分解」の定義もいえる。
解答は模範解答のように、
言葉による説明→式
とかける。
要するに、言い換えるための表現を道具として複数持とうとすることを優先しているのです。
応用力を育てる3つのステップ
私は、応用力とは、見た目や問う内容が異なる問題に対し、基礎的な考え方をあてはめたり活用して問題を解決する力のことであると位置づけています。応用力は、訓練で身につけられるようになると考えており、生徒には、以下のように伝えています。
- 言葉の定義を知り、理解し、言えるようにする
- 問題の解答手順ひとつひとつに、理由付けをし、説明できるようにする
- 類題を解くときに、式だけを書くのではなく、言葉を先に書くように心がける
まず第一段階は、言葉の定義です。
「方程式とは」「解とは」「因数分解とは」
など、用語の意味がよくわからない状態で考えようとしても何もできません。
材料も道具もないのに料理を作ろうとするようなものです。まずはここからです。
次に、第二段階では、解答手順のひとつひとつを分解し、
・この式は何を求めるためのものなのか
・なぜその公式が使えるのか
を事前に説明できるようにします。
実は、模範解答そのものがそのような書き方になっているはずです。
$$
\begin{align}
ax+3=9\\
2x+3=9
\end{align}
$$
ではなく、
$$
\begin{gathered}
ax+3 = 9 \\
\text{$a=2$ であるから} \\
2x+3 = 9
\end{gathered}
$$
のように、式の前に説明を書くというところまで、徹底的に真似てみてください。
最後に第三段階として、これを次の問題で使ってみようとします。
できないときは模範解答を書き写し、別の次の問題でチャレンジしてみましょう。
応用問題が解ける子は、このようなところまで準備をしているのです。
考えるための道具を事前に用意し、それをあてはめる体験を十分に積めば、その経験が一定量蓄積したところで、成果となって見えるようになります。
まとめ 〜“考え方”の力は一生もの〜
言い換えることによって問題を解決に導くことそのものは、全ての場面に応用ができることだと思います。数学の学習を通じて、その技術を身につけると一生役立つものを手に入れることになります。その手助けをできることを目指して毎回指導を行っています。

今回は以上です。
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執筆者プロフィール

神田算数・数学教室 塾長 神田寛元
東京大学理科1類卒業。受験指導歴10年以上。「偏差値20足りなくても志望校合格」を実現する指導スタイルで、通っている塾から志望校変更を薦められた生徒を初志貫徹で合格に導く。
「問題の解き方を覚えること」ではなく「考え方を理解し説明できること」を重視した指導により、模試の合格判定に関係なく志望校合格を実現。特に算数・数学の思考プロセスの言語化指導を得意とし、根本的理解に基づく学力向上をサポートしている。
神田算数・数学教室
東京都中央区(新富町駅・築地駅近く)
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URL: https://kanda-math.net/
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