とりあえず、点数が取れたらそれっきり…中学受験で「目先の点数」は追うな!

2021.04.21 中学受験

以前、受験生を指導するときに、重要単元は身につくまでひたすら繰り返すので、結果として一年間同じことしかしないこともあるというお話をしました。
すると、当然ですが、塾で行われる試験で点数を取ることはできない状態が続きます。


塾の試験では、
今月は割合の問題が出る、
来月は速さの問題が出る、
・・・

というように出題範囲が毎回変わっていきますが、その間ずーーっと割合ばかり勉強するわけです。


速さの問題が出されても解けるわけがありません。

すると、多くの保護者様は、(見た目の)成績が上がらないため、こうお願いしてきます。
「(基礎も大事だとは思うのですが、)塾の試験対策もしてください。」


実は、ここの選択が勝負の分かれ目
です。
私なら、どうするか?


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保護者様からの依頼の場合、原則として塾のテスト対策はしません。
しかし、同時に面談の日程を組みます。そして、ご納得いただけるまで、なぜしないのかを説明します。一回で完結しなければ、何度でも日程を組み直します。それこそ、理解していただけるまで何回でもお話しします。説得と言った方がよいかもしれません。私はここは絶対に譲りません。


なぜなら、ここを譲ったら、もう挽回する機会は二度と来ないと知っているからです。


(正確に言うと、過去の経験からそうなる可能性がほぼ100%だと確信しているからです。)つまり、私が最重要と位置づける基礎力をつける機会が失われるとわかっていながらそれを認めることはできない、ということです。

ただし、生徒本人が試験対策をしてほしいと自分の言葉と意思でで伝えてきた場合は、行います。状況によっては丸暗記になることもありえますが、そのことも含めて説明し、後日納得感を得るまで学習し直そうと約束した上で対応します。


さすがに、生徒自身の意思で「なんとかクラスを上げたいから(目先の点数が欲しいので)教えてほしい」と言ってきたものを無下に断りはしません。生徒の自主性を重んじることが何より大切だと考えているからです。

何のための受験なのかを考えれば、明らかです。申し上げるまでもなく、私の自己実現のために保護者様は授業料を払ってくださるわけではありません。生徒が志望校に合格し、その後の日常生活に役立つような力をつけてもらうことを手伝うために私はこの仕事をしています。


だから、判断基準は、
「今と将来の生徒の生活に役立つか?」
この一点だけです。
ちなみに、模試の対策授業をお願いされることもよくあります。


模試でいい成績をとる
 ↓
合格可能性としてよい数字が出る
 ↓
合格に近づいている(気分を味わえる)


という、一見正しそうで、かつ、気持ちよくなれる状況が見込めるので、それを求めるのでしょう。気持ちはわからないでもないです。


しかし、冷静に考えてみていただきたいのですが、本試験では、何がどう出題されるかはわからないのです。だから、本当に合格するために有効な力をつけたいなら、何が出てくるかわからない状況の中で何が出てきても合格点を取るために必要な技術を身につけることを優先すべきではないでしょうか。


であるならば、事前に出題範囲が決まっている試験対策をしただけで、本試験で点数が取れるようになるのか?


多くの場合、そういう依頼があるときは、手っ取り早く正解を出して目先の点数を上げる方法を知りたいという動機による場合がほとんどです。(これについては、まれにそうでないこともあるので、そういうときは対応します。)


そもそも、
・いつきかれても答えられる(問題が解ける)力がついた
 ↓
・模試でも解けた
 ↓
・だから模試の合格判定がよかった

という流れならばその判定は信頼できます。


しかし、付け焼き刃で出そうな問題の解法を詰め込んだからたまたま出題された問題が解けたからといって、「いつきかれても」解けるようになったとはいえません。だから、そうして獲得した得点を元に出された合格判定は信用できないものになります。


そうとわかってはいても、判定がよいと「できるようになった気がする」のでその気分の良さに負け、実力以上に点数をかさ増ししただけだという現実から目を背け、模試の後に「いつきかれても答えられる」力をつけるための復習はしないものです。そうして、現実とかけ離れた夢を見にことになるのです。


よって、私はそういう場合、まずは出題範囲の単元の中から、超初歩的なことから質問していき、基礎ができていないところを見つけたらその修正に取り組むという、結局いつも通りの指導を行っていくことになります。


と、まあ、こんなに長文で語っておきながらいいにくいのですが・・・
現実には、状況に応じて最善と考えられる方法をとるので、杓子定規にとにかく試験対策はしません、というわけでもありません。不安にはある程度のガス抜きも必要です。


それでも、原理原則というものは大切です。重要な部分は原理原則に従った上で、崩しても大勢(たいせい)に影響がない部分は臨機応変に対応していけば、自ずと希望している成果は出るものです。
受験生やその保護者様に参考になるとうれしいです。